日本で伝統東洋医学を極めたい場合は鍼灸師の資格を獲得することをおすすめします。しかし鍼灸の施術を行う予定がなければ国家資格は必要がありません。ちなみにあん摩マツサージ指圧師の資格は鍼灸師の資格ほど優先度が高くありません。国家資格はありませんが、推拿、抜缶(カッピング)、かっさなどの施術であれば整体院、足つぼサロン、エステサロンという選択肢があります。日本では一部の伝統療法は民間療法と分類され、これらの技術は資格が要りません。
これから鍼灸、あん摩マッサージの資格を取ろうと思っている方は事前の下調べや先輩からのアドバイスをもらったり、アルバイトなど一度業界を体験してから国家資格の取得を考えると良いでしょう。近年国内の統計では国家資格獲得後に5年間も鍼灸の仕事を続けている方は数%程です。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない【あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第一条原文引用】
伝統医学を極めたい者にとって国家資格があれば社会的信用度が高く重要です。この点では民間資格のカイロプラクター、整体師、ボディケアの施術者より有利です。一般の患者(一部除く)はあまり施術者の肩書を気にしておらず、殆どの人は鍼灸師以外区別をしていません。柔整師もあん摩師も整体師の違いを区別していません。例えば本来接骨院は脱臼、骨折、挫傷などの急性の怪我への施術のみ許されますが、一般的な認識では保険適用マッサージするところだと言われます。日本の法律では鍼灸師も柔道整復師もあん摩マッサージ指圧師の資格を持っていない場合はマッサージ行為を行ってはなりません。保健所に通報されることがあります。
※【あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第一条】の説明通り、 あん摩マツサージ指圧師の資格を持っていない柔道整復師がマッサージを行うこと自体は違法行為ですが、両方の資格を持っている場合のみ整復もマッサージも施術可能です。鍼灸師も同じです。
鍼灸師になるには、はり師・きゅう師の国家資格取得が必要となり、一年に一度公益財団法人東洋療法研究試験財団が開催している国家試験に合格する必要があります。日本では鍼灸師は「はり師」「きゅう師」双方の国家資格を取得した人がなることができる職業で、鍼や灸を用いて全身にあるツボに刺激を与え、治療を行います。そのため鍼灸師という資格は存在せず、「はり師」と「きゅう師」の国家資格を両方持つ人のことを鍼灸師と呼んでいます。 「はり師」「きゅう師」共にツボを刺激するという概念や共通の技術が多いことから、両方の資格を取得して働く人がほとんどです。
日本と大陸の見解が違い、本場では鍼と灸を分けることはなく同じ学問であり「鍼灸」の言葉通り切り離せません。ですが現代の日本では「鍼」と「灸」は別々の学問になっています。
現在あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師国家試験において実技試験はなく筆記試験のみとなります。各養成学校で卒業実技試験として技術レベルが水準に達しているか確認します。学校によってレベルが違いますが、治療の技術を教えるより事故にならないように安全な施術ができるかどうかの教育です。
学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することのできる者で、3年以上、文部科学大臣の認定した学校又は厚生労働大臣の認定した養成施設(いわゆる専門学校)で必要な知識及び技能を修得した者。(高卒以上)
医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、はり理論及び東洋医学臨床論
1年学費約130万円+教材×3年間
1資格試験につき 14,400円。(はり・きゅう合計28,800円)
ざっくり諸費用で400万円以上ですが、仕事の出来ない分の収入がかなり減ると思います。
※有資格者の学費は大体割引が有って3年間でトータル100万です。
(2022年時点)
鍼灸師の平均月収は約18万円~30万円、平均年収は350万円~450万円程度と言われています。
※契約書に明記せず見習い期間3~6ヶ月給料が出ない治療院もあるため要注意です。
はり師ときゅう師の合格率:70%前後
医師の合格率:92%以上
看護師の合格率:90%前後
あん摩マッサージ指圧師:86%前後
(2022年時点)
合格基準は、総得点170点満点中、102点以上で合格となります。つまり合格ラインは60%の回答率です。共通問題160問+はり師10問+きゅう師10問。(はり・きゅう師の試験が同時に行うので問題数が180問です)※試験料ははり・きゅう師2つ分です。
科目 | 点数 |
---|---|
医療概論 |
(4) |
衛生学・公衆衛生学 | (6) |
関係法規 | (4) |
解剖学 | (9) |
生理学 | (9) |
病理学概論 | (6) |
臨床医学総論 | (10) |
臨床医学各論 | (22) |
リハビリテーション医学 | (12) |
総合問題 基礎科目 | (8) |
科目 | 点数 |
---|---|
東洋医学概論 | (16) |
経絡経穴概論 | (20) |
東洋医学臨床論 | (24) |
総合問題 専門科目 | (10) |
はり・きゅう理論 | (10) |
あん摩マツサージ指圧師の試験内容について専門科目以外の範囲は鍼灸師の国家試験とほぼ変わりませんが、出題内容は鍼灸師の試験より素直な傾向があります。