「理筋正骨」という言葉は日本ではあまり馴染みがありませんが、簡略に述べると伝統医学にも現代カイロプラクティックのような技術が存在しています。カイロプラクティックは主に骨格矯正の技術であるとよく知られています。昔の中国では骨格のみならず、皮膚、筋肉、関節などの組織も重要視しているのが特徴です。伝統医学はとにかく体の流れを良くするイメージですが、この技術は「内側」の流れだけではなく、どちらかと言えば主に「外側」を矯正して「内側」の流れまで良くすることです。例えば筋緊張のせいで筋肉が必要以上に収縮され、筋肉の間に走行している血管が圧迫することで血行が悪くなります。したがって緊張さえ取り除ければある程度の循環が回復します。
按摩・マッサージとしても知られている「推拿」は古代では「按蹻」としても知られています。「推拿」の名称は中国の明王朝で最初にみられました。推拿は古代治療法の一種であり、初めに推拿が痛みを軽減または消失させることが可能であり、それに基づいて更に人体への調節効果を認め、推拿を漸進させました。
一般的に使用される方法に「推、拿、按、摩、掐、滚、摇、揉、搓、抖」などの手法が含まれています。皮膚の表面、筋層、経絡経穴を推拿し、関節をやわらげ、血液の循環を促進し、内臓の機能を調整することで、体の免疫力を高め病気を治すことです。推拿は按摩・マッサージとよく似ていますが、大きな違いはマッサージが主に筋肉を揉み解すことに対して、推拿は骨(関節)までほぐすことであり、カイロプラクティックに似たような矯正技術も含まれます。
端的に「姿勢が悪い」といいますが、無意識で正しくない姿勢を取り続けることで体の歪みが生じてしまいます。骨格の歪みが原因で骨に付随する筋・腱がずれ、解剖学における生理機能の影響だけではなく、経絡も影響されることで体に異常が起こります。したがって過剰な筋緊張で、腰痛・肩こりのような筋肉痛や内部疾患にまで発展します。
普段私達は姿勢を意識せずに生活していますが、実は知らず知らずのうちに体に負担をかけてしまっています。
左のモデルのように左右のバランスがとれている姿勢が体の負担が最小限のため、正しい姿勢です。
右のモデルは真っすぐ立っているようで、脊柱と両足のバランスが崩れています。特に足元のバランスが崩れると全身に影響を及ぼします。肩こりや腰痛だけではなく、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、頚椎症、五十肩など疾病の原因にもなります。
仕事、勉強、食事など座る姿勢を意識することはあまりありません。
多くの人は作業をする時に前傾姿勢になったり、足を組んだり、肘掛けにもたれたり、左右のバランスが崩れるクセがついています。特に足を組むことや後ろポケットに財布などを入れて座ると骨盤に大きな負担がかかります。
正しい姿勢で座っていても長時間同じ姿勢をとり続けることは腰椎を痛める原因となります。適度に休憩をとり、立って体を動かしたり伸ばしたりすることが望ましいです。
成人の頭の重さは約 4~6kgあり、頚椎を含む胸椎と、首や肩、背中の筋肉がこの重さを支えており、うつむくだけで頭の重さの数倍の負荷が首にかかります。つまり私達は常に約5kgの米袋を首の上に載せて生活しているようなものです。
体がまっすぐにしているときは首の負担は軽く、しっかり支えられますが、左の図のように前傾姿勢では頭の重さを首で支えようと姿勢を維持するため、頚椎に負担がかかります。
頚椎は腰椎や胸椎に比べ小さくデリゲートなため、変形を起こしやすい部位です。日常生活で仕事や読書・ゲームなど長時間下を向く姿勢を続けることは頚にはかなりの負担がかかります。頚椎症、ストレートネック、頚椎椎間板ヘルニア、腕神経叢損傷などの原因になります。
内科の疾患と比べ外部から見てわかる疾患の治療は明瞭です。
多くの人の悩みは腰痛や肩こりです。大半の腰痛の原因は腰椎と骨盤にあります。
骨盤に原因あればそこを治療すれば改善できます。しかし疾患の原因は骨盤だけではなく他の部位にもあります。身体は一部分だけではなく全身を診るべきです。
体の土台となる骨格は骨盤です。骨盤の歪みの原因は姿勢と筋力不足ですが、その他、怪我等外的要因や病気等内臓疾患でも骨盤に負担がかかることもあります。
その骨盤を支えているのが足です。立ち姿勢や歩く姿勢や座る姿勢も足で骨盤を支えてバランスをとっています。無意識下のクセが骨盤に悪い影響を与えます。足自体に問題があることで、腰痛に悩まされることは多くあります。
医師と患者自身が足のトラブルに気付くことが極稀であり、適切な治療を受けることがなかなか出来ません。
肩こりの原因は肩甲骨周りの僧帽筋だけではなく脊柱全体(腰含む)、腕部、口腔疾患等があります。人それぞれ症状や病因が違うため治療法も異なります。安易な肩揉みやマッサージでは肩こりを治すことができません。肩こりの原因が腰に影響を与えることもあるため(逆も含む)腰痛と肩こりが同時に発生する場合が殆どです。
推拿を使って治療するには問題のある筋肉や関節等をほぐし、経絡に沿って治療することが望ましいですが、正確にすべての患部を見つけることは困難です。
一見地味に見えますがこれが推拿の治療方法です。
経筋には十二経筋系統、経絡系統、臓腑系統、心血管系統、神経系統、リンパ系統が含まれています。
経筋病の病理学的基礎は主に慢性疲労の後に経筋組織の拘縮、ねじれ、変位、組織バランスが崩すことです。更に経筋組織が蓄積、癒着、瘢痕などの病理学的変化や内部筋性の循環系に障害を起こし、筋、腱の閉塞、血液うっ滞、栄養失調、神経伝達不良などで悪循環となる、これが経筋病を引き起こす主な要因です。
古人曰く「諸內,必行於外(身体の内側にある症状は,必ず外側に現れる)」「病藏於內,証形於外(病気は身体の内側にあり、症状は外側に現れる)」とされ、これは相互変容と相互影響です。経絡と腱は内臓機能の活動に影響を与え、内臓疾患は体の表面の経絡も反映します。これが経筋病の重要なメカニズムです。病気の治療は外部治療と内部治療を分ける必要があります。
経筋医学は経筋や骨格系統の全体的な正常な機能、分布、循環、病因、臨床の検査方法、診断および治療を研究することです。また経筋医学は専門分野として予防医学、リハビリテーション、ヘルスケアに組み込まれています。経筋医学では人体には自然治癒力があるとされています。病気の主な原因は経筋が閉塞して気や血の流れが滞り、骨格が不安定となりさまざまな疾患につながります。経筋の閉塞が解消し骨格を調整すれば気や血が正常に身体に巡り、体の免疫機構が効果を発揮することで病気が治ります。その治療法には、手技療法、鍼灸療法、運動療法などがあります。