伝統鍼灸

伝統鍼灸と現代鍼灸は伝統医学と現代医学のように全くの別物です。詳しく解説していきましょう。

 

鍼灸とは

鍼灸は秦王朝より前の時代から開発され、6世紀に韓国、日本、その他の国々に広まりました。現代では代替医療として世界各地に普及しています。

鍼灸は鍼と灸の組み合わせです。伝統的な治療では人間のツボへの鍼灸が使われます。伝統的な漢医理論によればツボを刺激することで気の流れを改善することができます。しかし、現代医学は組織学および生理学から気、経絡、またはツボの存在はまだ発見しておらず、一部の鍼治師は、伝統的な理論システムに従って実践していません。その有効性を証明するのに十分な現代医学実験がないためです。

ニューヨーク州のロチェスター大学メディカルセンターの神経科学者であるMaikenNedergaardはマウスを使用して実験を行い、針が組織を貫通した後に大量のアデノシンが放出され、痛みを抑えるのに役立つことを発見しました。この研究は鍼でもたらす効果だと考えられます。

 


伝統鍼灸の原理

伝統医学は人体の経絡系が「気、血液、津液」を身体全体に巡っていると考えています。これらは体内を循環してさまざまな組織や臓器とのバランスをとります。しかし身体(経絡)が滞ると、「邪」(さまざまな病気の原因)が侵入することもあり、伝統医学はこれを病気ととらえます。人体に鍼を挿入することで身体に反応を引き起こし、血液循環を促し、経絡を正常に戻すことで病気を治すことができます。つまり体の流れを良くするために鍼を用いることです。

 


鍼と灸

鍼、灸は2つの治療法です。伝統医学は一般的に急性疾患を治療するために鍼を用い、慢性疾患を治療するために灸を使用します。漢醫學の鍼灸理論の基礎は「臓腑陰陽経絡学説」にあります。伝統的な漢方薬の処方治療法と比較して、鍼灸治療の特徴は効果が迅速かつ安くて※簡単です。

※日本と比べると中国の鍼灸治療費用はかなり低価格です。

 

金属製の細く先の尖った鍼を人体の特定の部分(経穴)に刺し、酸、しびれ、腫れ、重さなどの感覚を与え、病気を治す効果があります。伝統医学で使われている経穴は「天、人、地」の3層に分かれており、各層に達すると「鍼の感覚」があります。刺針を行う際は条件に応じて鍼の深度を決めます。

艾(もぐさ)を小さなボールや長い帯状にこねて火をつけた後、人体表面の特定の部分(またはその近く)に置きます。または艾を体に乗せてから火をつけます。

 


鍼灸の治療効果

鍼灸の治療効果はすでに先進国とWHO(世界保健機関)でも認められており、軍隊の治療でも鍼灸を用いられています。

しかし有効な治療方法といっても万能ではないため症状によって鍼灸治療は向きと不向きがあります。一般的に鍼灸だけで肩こりと腰痛によく効くと勘違いされることが多くあります。

 

鍼灸の基本は体の気の流れを促進することで滞りを取り除き、患者自身の自然治癒力を高めて様々な内科疾患が治ります。筋肉や神経を刺激して一時的に体をほぐすことができますが、効果が長く続かないため他の治療方法を併用する必要があります。

 

麻酔効果について「鍼麻酔」という技術があります。鍼をつぼに刺し、低周波の電流を通したり細かな振動を与えたりして鎮静・鎮痛効果を得る麻酔法ですが、普通の薬品を使う麻酔の方が一般的です。

 

効果◎

一般的な神経症、自律神経失調症、体の冷え、風邪ではないが体がだるいの症状は鍼灸治療だけでも効果的です。体の滞っていることが原因の一つだと考えられています。

 

鍼灸治療は血行促進や免疫力向上など病気の予防になります。

特に血行促進効果はあるため育毛・発毛効果が期待できます。

 

早期対応が必要ですが、一部の顔面麻痺は後遺症なく完治することが可能です。

※発症後1~2週間以内治療を行うことで効果が期待できますが、タイムリミットをすぎれば完治は難しくなります。「刺絡」を併用することがより効果的です。

 

効果△

腰痛・肩こりなどの痛みは一時的に効果が大きく現れる対症療法です。鎮痛剤の服用で一時的に痛みは緩和できますが、完治することはありません。腰痛・肩こりなどの痛みは非効率ですが2,3日に一度鍼灸治療をし、毎日意識して姿勢矯正の必要があります。これらの症状は鍼灸治療と他の治療を併用することがより効果的です。

 

美容鍼はシワやたるみ・リフトアップなどに速効性・短期間の効果があります。

 

効果✕

椎間板ヘルニア、分離すべり症、骨変形、リウマチなど整形外科の疾患です。鍼灸治療で痛みを緩和することは出来ますが完治できません。

アメリカ海軍の軍医による管鍼法を用いた施術の様子。揚陸艦ニューオーリンズの医務室にて。

鍼に低周波を通電する様子。同アメリカ海軍軍医による施術

日本鍼灸と現代鍼灸

日本鍼灸は伝統鍼灸とは異ります。唐の時代に鍼灸が日本に伝わり、現代に至るまで時代と共に独自の進化を遂げました。現在の中国、韓国、日本の鍼灸はそれぞれの文化、土地、気候などの影響によって全く違うものに躍進しました。

日本国内では中国鍼灸が刺激が強いと思われ、中国国内では日本鍼灸は治療ではなくただのリラクゼーションと思われています。より良い治療するために目的に応じた治療方法を選択する必要があります。

 


伝統鍼灸を極めるには

伝統鍼灸を極めるには、まずは「気」を理解することが前提です。本来の伝統鍼灸は相手の気を操作し、患者の気血の巡りを良くする技術です。「気」を理解できなければ伝統鍼灸を極めることが出来ません。「気」の感じ方は人によって全く違います。現状正しく「気」を感じ取り、応用して治療できる医師は1割にも至りません。感性と努力が必要なため、誰でも習得出来るわけではありません。

 


現代鍼灸について

伝統医学の概念とは関係なく、現代医学を基にしている鍼灸の技術です。伝統鍼灸のような難解な部分がなく、解剖生理学の理解があれば習得できます。伝統鍼灸とは全く異なり、新しい学問です。

 

効果○

持続効果は乏しいですが、解剖学に基いて筋肉を刺激することにより、ひどい痛みや重みの症状を緩和することが出来ます。なお、一時的に筋肉の緊張を和らげることができるため、スポーツの試合前に刺針することで腱、関節の動きがよくなり、より良いパフォーマンスが期待できます。

 

効果△

現代鍼灸は神経や筋肉を刺激することで、結合組織に効果をもたらします。そのため、内臓疾患や神経疾患の治療には向いていないと考えられます。

 


色々な鍼灸

鍼灸は長い歴史を経て発展しているため国や地域によって様々な流派があります。発展の中で基礎理念・概念に独自な解釈が含まれたため、ひとえに鍼灸といっても流派によって治療方針や技術が全く異なります。