中藥・漢方薬

「中藥」と「漢方薬」には共通点が多くありますが似て非なるものです。

「漢方」は5~6世紀(中国・三国時代の頃)に日本(飛鳥時代)に伝わり、日本の風土・気候や日本人の体質にあわせて独自の発展を遂げ、江戸時代に日本漢方医学が完成されたといえます。

これに対し「中藥」は日本に伝わらず大陸内(当時の中国)で発展を遂げたもので、その学問を「中藥学」といいます。

 

「中藥学」は中藥における基礎理論、産地、製造方法、効能、臨床応用に関する知識を研究・運用する学問です。伝統的な本草学、生薬学は近代西洋医学の影響で徐々に本来の「中藥学」に含まれ幅広い学問となりました。

 

中藥と現代医療の薬はの服薬の目的が根本的に違います。「中藥学」は鍼灸・推拿等の伝統医術と同じく一部の病気を診ているわけではなく、陰陽五行などで身体全体の流れを診てバランスを調整することが目的です。

例えば風邪の場合、西洋医学では西藥(西洋医学の薬)で熱を下げる、鼻水や喉の炎症・痛みなどを抑える対症療法です。中藥は対症療法で症状を抑えることではなく、体のバランスを整え、体自身の免疫力を高め、身体本来の正常な状態に近づけることが目的です。風邪の症状は人によって違うため、同じ中藥・漢方薬で同様の効果があるわけではありません。薬局で購入できる漢方薬がありますが、弁証せず自己判断の服薬で余計に悪化せてしまうことがあります。中藥は西藥と併用して服用可能ですが、必ず医者にご相談ください。

※中藥・漢方薬は健康食品ではありません。

 


特性

中藥の特性は主に四氣五味、昇降浮沈、帰経、有毒無毒、配伍、禁忌などが含まれます。

 

四気五味

四気または四性ともよばれ、寒・涼・熱・温の4つ薬性です。温熱は陽に属し、寒涼は陰に属す。熱・温・涼・寒の順に熱の程度を指します。薬効は症状の冷たさや熱さの性質に応じて使い分けます。寒藥は一般的に清熱瀉火(熱を取り除き、火を一掃)、涼血解毒(血液を冷やし、毒を無害化する)の効果があります。熱藥は(石膏や知母など)温中散寒(身体の中を温め、寒さを払いのける)の効果があります。

 

陰陽だけでなく、中藥により五行バランスの調整が出来ます。五行には五味(酸・苦・甘・辛・鹹)があり、味覚で薬や食べ物の属性を分けます。以酸養骨、以辛養筋、以鹹養脉、以苦養氣、以甘養肉、以滑養竅(酸で骨に栄養を与え、辛で筋肉に栄養を与え、鹹で脈に栄養を与え、苦で気に栄養を与え、甘で肉に栄養を与え、滑で毛穴に栄養を与えます)。五味にはそれぞれ効能があります。

 

昇降浮沈

昇降浮沈とは上昇、下降、浮表(発散)、沈下(収束、統合、排出)であり、身体に対する中藥効能のいくつかの傾向をさします。症状の傾向はそれぞれ上、下、内、外の方向があります。昇浮薬は昇陽、發表、袪風、散寒など上向きおよび外向きの効果があり、沈降薬は清熱、瀉火、瀉下、利尿、消食、駆虫、平肝、止渇平喘、収斂固摂など下向きおよび内向きの効果があります。

 

帰経

帰経は臓腑と経絡理論に基づき、薬の作用する部位と範囲を示しています。 帰は帰属、経は臓腑経絡です。

帰経は薬効成分が体内のどこに分布するかではなく、体のどこに影響するかをさします。現代医学と伝統医学の解釈は異なるため漢醫における臓腑経絡は現代医学の解剖学と混同するべきではありません。

 

毒性

中藥に含まれる生薬の中には毒性があるものがあります。毒性の反応は副作用とは異なり、より人体に有害なものです。そして生命を脅かす可能性もあります。

東漢時代では『本経』が「有毒と無毒」の区別を提唱し、『本草綱目』では薬物の毒性を「大毒」「有毒」「小毒」「微毒」に分けています。毒性の高い物はもちろん、比較的毒性の低いまたは毒性がないといわれる中藥は、毒性反応が完全にないわけではありません。たとえば高麗人参、ヨモギ、ハナスゲは過剰投与または長期間に過剰摂取すると毒性反応を示すことが報告されています。これらの医薬品の毒性は原産地、品種、加工、適合性、投与経路などに関係します。したがって中藥・漢方薬を使用する場合は信頼における中醫に処方してもらいましょう。

 

配伍と禁忌

配伍は2つ以上の中藥薬剤の組み合わせを指します。中藥は配合に非常にこだわっており、様々な症状に対し多岐にわたる薬の特性に応じて調合します。中藥を処方するときは君、臣、佐、使の原則に基づいています。2つ以上の薬を一緒に使用することで毒性と副作用を減らし、より治療効果を得られます。中藥の配合は単行、相須、相使、相畏、相殺、相惡、相反の7つを「七情」といいます。

禁忌には配伍禁忌(十八反十九畏の原則)、証候禁忌、妊娠中藥禁忌、服薬中の飲食禁忌があります。