伝統医学について

ユナニ医学、インドのアーユルヴェーダ、漢醫学のことを三大伝統医学といいます。伝統医学と現代医学はまったくの別物です。基礎となる考え方が全く違うためこれから伝統医学を勉強する方は現代医学とは違うということを意識すると良いでしょう。

 


「漢醫學」と「中醫學」の歴史

「漢醫學」という言葉には2つの由来があります。一つは日本から、もう一つは清王朝からの伝来です。「漢醫學」は中国で開発された伝統的な医学思想および治療技術です。漢民族によって開発された医学の伝統であるため「漢醫學」と呼ばれます。漢文化の発展と共に、韓国、ベトナム、日本などに広まり、各地方の医学と組み合わせて、さまざまな流派を形成しました。実は「漢醫學」という言葉が最初に使われたのは日本でした。江戸時代に西洋医学の「蘭醫學」(オランダ)と区別するために「漢醫學」という言葉を用いました。清王朝もこの用語を大陸の伝統医学を指すために使用しました。1949年以前の中国大陸では「漢醫」という用語がより一般的でした。清王朝と中華民国の後、それは伝統的な「國醫」とも呼ばれていました。現在の中華人民共和国では「中醫學」(中国の医学の意味を強調するため)が「漢醫學」よりも一般的に使用されています。ただし、このより中立的な「漢醫學」という用語は、日本や韓国などでまだ使用されています。日本の漢方医学、韓国の韓国医学、北朝鮮の高麗医学、ベトナムの東医学はすべて「漢醫學」に基づいて開発されています。

 

1966年から1977年まで続いた中国の文化大革命で、大衆運動によって当初は事業家などの資本家層が、さらに学者・医師・弁護士などの「知識人」等が弾圧の対象となりました。大量の殺戮が行われ、その犠牲者の合計数は数百万人から1000万人以上ともいわれています。第2次世界大戦、中国の内戦、文化大革命を経て「知識人」と呼ばれる医者が虐殺され、医学書も大量に燃やされ、烏合の衆しか残っていない中国の伝統医学は崩壊寸前まで追い込まれました。幸い大陸文化の歴史が長く、多くの優秀な人材や書籍が海外に広まり、伝統医学が無くならずに済みました。しかし、昔の大陸には「門外不出」という悪習があり、優れた知識には他所の人はおろか、自分の弟子にすら教えないので、良い医術と文化はほぼ滅失され、先人と共に失われました。現代の「中醫學」は中国の国内に残っていた僅かなものと国外から逆輸入の寄せ集めで新しく生まれた医術です。

 

「中醫學」は良い意味でも悪い意味でも近代中国の新しい医術まで含まれているため、この協会は政治と宗教に関係のない「漢醫學」を使っております。

※このサイトでは古い中国の医療を表す言葉を中醫と記述しています。

 


はじめに

「伝統医学は難しい言葉ばかり使って何を言っているのかよくわかりません」という声をよく聞きます。では逆に「西洋医学は何ですか?」と問えば殆どの人が分かるようで実際大半の人がうまく答えられないでしょう。

 

最初は「陰陽五行」が分らなくても心配する必要はありません。簡単に解説すると「漢醫學」(伝統東洋医学)のキーワードはバランスと流れです。例えば体が熱かったら冷まし、冷たかったら体を温めます。余計なものがあったら取り除き、足りないものがあったら足します。これがバランスです。人間の体は詰まりやすく滞ってしまうため、それを取り除けば体の流れがきれいな状態になります。シンプルに考えれば誰でもすぐ理解できると思います。

 

伝統医学の基礎

漢醫學は陰陽五行の要素の理論に基づいて、人体は気、形、神の統一体とみなされ、4つの診断を「望、聞、問、切」の組み合わせる方法を通して、病因、病性、病位気機を分析します。体の五臓六腑、経絡関節、気血津液(体液)の変化、衰退と流れで病気の名前を決めます。弁証論治原則で「汗、吐、下、和、溫、清、補、消」等の治法で使用する中藥、鍼灸、跌打、推拿、按摩、拔罐、氣功、食療等多種治療手段および他の治療法は、人体に陰と陽の調整やバランス回復をさせるために使用されます。

 

漢方治療の良い面は体のバランスを取り戻すのに役立ちます。漢醫學の究極の目標は病気を治すだけでなく、人間が「黄帝内経」に記載された真人、至人、聖人、賢人の境地に近づくことです。

 

「漢醫學」では人間を自然界の摂理にあてはめ、最も基本的な物質を「気」とよびます。気のバランスが崩れると体が病的な状態として現れます。

天人合一、天人相応

「漢醫學」では人と自然は相互に結びいていると考え「天人合一」「天人相応」を基礎としています。人間の生命活動や病気の発生は、自然界のさまざまな変化(季節の気候、地域、昼と夜、朝と夕方など)と密接に関係しています。人々はさまざまな自然環境に住んでいます。人によって自然環境への適応度が異なり、身体的特徴や病気の耐性も異なります。したがって同じ病気の治療でも、時間、場所、患者の状態によって違うため、注意を払わなければなりません。

 

人体のさまざまな組織や器官は一体となっており、生理学と病理学の両方で相互に関連し、影響を受けていると考えられています。したがって生理学的視点のみの判断で頭痛や足の痛みを治療することは望ましくありません。「全体論的視点」に特に重点を置いて病気の治療と予防を行うべきです。