刮痧拔罐

刮痧(カッサ)

カッサは現代中国で最も有名な民間療法です。中国語の「刮」は擦る、削る、抉るという意味であり、「痧」は滞った血(瘀血)つまり老廃物の意味があります。

カッサ療法はカッサ板(水牛の角など天然素材で出来たヘラ状の道具)を用いて皮膚を擦ることで様々な症状を改善する療法です。皮膚を擦ることで現れる赤い斑点は病気の反応であるとされています。多くの疾患は気と血の停滞によって引き起こされます。「痧(赤い斑点)」は滞った気血の老廃物であり、斑点(瘀血)を体内から皮膚表面に排出することで経絡経穴の気血の流れを改善します。

 

注意点

カッサ療法は皮膚表面が傷付き感染の恐れがあるため十分に注意しなければなりません。

特に怪我など傷がある場所や出血傾向のある疾患、重病、新しい骨折、感染性皮膚疾患、伝染性皮膚病、虚弱体質、妊娠中の女性には細心の注意が必要なため、安易にカッサ療法をするべきではありません。

 

※本来カッサは治療方法であり美容法ではありません

止むを得ない場合を除き顔への施術は避けるべきです。カッサの過程で異常な痛みや発熱、発汗、神経過敏、脈拍異常等の場合は直ちに中止しなければなりません。

 

ここでいうカッサ療法は現代の美容カッサとは違います。


拔罐(カッピング)

拔罐は古代中国で角法といい、動物の角は吸引器具として使用されていました。拔罐療法(カッピング療法;英語でCupping)の伝統的な方法は加熱された「カップ(吸い玉)」を使用しカップ内に負圧を発生させ、皮膚を吸引することでうっ血を引き起こす療法です。近年では熱を使用せずカップから直接空気を抜く真空圧を利用するカッピングが主流になっています。これは伝統的な方法と違い温熱効果はありませんが、より強い吸引力があり火傷の恐れもありません。カッピングは中国では広く普及している民間療法のため誰もが知る治療法です。主にアジアで人気がありますが東ヨーロッパ、中東、ラテンアメリカ等世界中で知られる療法です。

 

カッピング療法

カッピングは経絡経穴の鍼灸治療に代用しツボを刺激することがあります。主に鍼灸を使用できない状況や家庭など鍼灸師(中醫)の資格を持たない人でも施術が可能であり、幅広く利用されています。

※本来カッピングは治療方法であり美容法ではありません

 

一般的にはマッサージの代用として皮下の筋肉や筋膜を引き寄せ、結合組織を刺激することで血液循環を促進します。これにより一部の軟部組織の痛みとけいれんを和らげることが可能です。近年では一部のアスリートがこのメカニズムを利用し試合前にカッピングを行い、筋肉の運動性の向上を望む選手が増えています。

 

古い医学書によるとカッピングは次の症状の治療に有用であるとされます。

発熱、慢性腰痛、食欲不振、消化不良、高血圧、にきび、アトピー性皮膚炎、乾癬、貧血、不妊症、月経困難症等

カッピングはカッサと同じく身体の血液循環を促進し新陳代謝を高める民間療法ですが、本格的な中醫・漢醫治療においてもカッピングやカッサを併用することが多くあります。

 

 

刺絡・血罐(缶)

伝統の刺絡療法は皮膚に三稜鍼を刺し、とは身体の中の滞った血(瘀血)を体外に出し血の廻りを改善する療法です。伝統の刺絡療法は三稜鍼など体を打って出血させます。

手足の指先にある井穴(ツボ)を刺して瘀血を体外に出すことを「井穴刺絡」といいます。

体幹の場合はカッピング療法と併用し多くの血液を吸い上げることで効果的に瘀血を体外に出すことが可能です。

 

刺絡療法は血管からではなく皮膚から数ml程度の瘀血のみ体外に出すことで血行の改善が目的です。多血症に用いられる瀉血療法とは根本的に違います。瀉血療法は直接に静脈から血液を抜き取ることであり、赤血球の数を減らすことで血栓をできにくくします。また赤血球に含まれる鉄を欠乏状態にすることで新たに赤血球が造られるのを抑える効果もあります。


刮痧(カッサ)と拔罐(カッピング)と共通点と効果

刮痧と拔罐はどちらも瘀血を出し血行を改善する民間療法のため誰でも出来ますが、背中に満遍なく行うより、中醫など専門知識(経絡経穴の知識)のある方が施術することでより効果があります。

瘀血を出し血行を改善することは新陳代謝を促し免疫の恒常性を保つことです。

瘀血を出す時に生じる毛細血管の破裂による溶血は、免疫系(白血球)の貪食作用を促進し免疫力を向上させます。

刮痧や拔罐は意図的に筋肉・筋膜を傷付けることで炎症を起こし免疫系に作用します。免疫系の促進は局所の血行循環を改善することで筋緊張(肩コリ等の痛みの原因)を取り除き、痛み(腰痛・肩痛等)を緩和することができます。

刮痧や拔罐で経絡経穴の滞りを取り除くことで気血の巡りを改善し、血液・津液の循環を促すことで冷え症、むくみ、便秘、生理痛、風邪、胃腸の不調等に効果があります。

 

専門家の刮痧拔罐

元来刮痧拔罐は伝統的な漢医学に基づく治療方法です。

中醫など専門知識(経絡経穴の知識)のある治療家はカウンセリングと診察を行い、患者の症状を的確に見定め、必要な経絡経穴・筋肉のみ治療します。(※特例を除き全身赤くなるまで施術を行うことはありません)

必要に応じて刮痧拔罐だけでなく推拿、矯正、刺絡、中薬など様々な治療法と併用して治療します。

 

※注意

刮痧拔罐を背中に満遍なく行うことは身体に大きな負担がかかります。乳幼児や高齢者、虚弱体質の方への施術は要注意です。

 

 


禁忌(施術後に注意すべきこと)

1. 汗は必ず拭くこと。患部をこすらない。

2. 風邪(ふうじゃ)が身体に入りやすいため、直接身体に風をあてない。

3. 3~4時間は入浴やシャワーをしてはいけない。それ以降に入浴し清潔に保つこと。

4. 血行の流れに影響があるため、身体を冷やさない。冷たいものを口にしない。

5. 脂質の多い食物や味の濃い食物を控える。